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オモコロ編集長が語る「Webクリエイターの頭の中」 第4回「『バカドリル』作者タナカカツキ氏とお喋り会」(後編)
タナカカツキ氏とデジオ(ネットラジオ)の話や、心のバランスの取り方などについてペチャクチャ喋りました。

前回の対談では、主に仕事を進める上での『速さ』や『効率』をアップするためのコツをお届けしました。今回は二人の共通項でもあるラジオの話をきっかけに、タナカカツキ氏がどのようにアイデアを生み出しているのか、さらには仕事を広げて行くためのヒントまでお伺いしました!
そして、対談のときの写真が全然足らなかったので、まったく関係のないタナカカツキ氏のプライベート写真を差し込まさせていただきました。
本文の内容と画像は一切関連性がございません。 ご了承くださいませ。
ラジオで話術を培う

シモダ: カツキさんは『デジオナイト』っていうポッドキャストを放送されていて、僕は学生の頃に生放送のラジオをやってたことがあったから、はじめてお話したときには自然とラジオの話になりましたよね。ラジオってどういうきっかけで始められたんですか?
タナカ: 喋る訓練でしたね。日々の出来事をちょっと喋ってみようと思って始めたんです。元々、おしゃべりが出来る人にすごい憧れてたんですよ。落語家とか、やっぱり話芸ってすごいなあって。あとやっぱり大阪では友達と遊ぶときに喋って遊びますよね。ネタをつくって来たりして。そうやってせっかく自然に身に付いてるものがあるんだから、普通の遊び以外に、技術として自覚して個人で高めてみようって。
シモダ: 作品としてきちんと作ろうと思ったってことですか?
タナカ: 作品というよりも、ステップアップっていうんですかね。例えば草野球やってて、結構打てるようになったら、ちょっと社会人選手権でてみようかなっていう感じですかね。ちゃんとした舞台で楽しみたくなったっていうか。それが最初です。
シモダ: 僕、はじめてラジオをやったときは、むっちゃ長い独り言やなっていう印象やったんです。2時間半くらい一人で喋ってたんですよ。でも隣がオヤジの部屋やから、それがすごい気になってしまって。聴かれてるんちゃうかって思って恥ずかしいし、長い独り言で息子は頭がおかしくなったんちゃうかって思われへんか心配で、はじめはノリノリになれなかったんです。
タナカ: 壁も薄いし。
シモダ: でも、やり始めてるうちに癖になってきて、次に友達をゲストとして呼ぶようになって。友達と普通に会って遊ぶよりも『ラジオ録ろうや』って集まるんがすごいおもしろくなったんです。会話をラジオとして残すために集まるのって、すごい生産的やなって。それにラジオきっかけでおしゃべりができるから、普通に友達と遊んでる時よりも1.5倍から2倍くらい喋りません?
タナカ: うん、あと気合いも入るしね。ラジオを録り終えてレコーダー切ったあと、なぜかふぅーとけだるい疲れが来る。ひと仕事終えた感っていうか、緩急がちゃんとあって楽しいんですよ。
シモダ: あと、普段喋らないテーマでも喋りますよね。絶対友達同士では喋らんような、全然ちがうフィールドのお話ができるのはラジオならではかなと思います。
タナカ: それにラジオっていう体裁があるんで、聞き手の存在を意識してか、ある程度聞きやすくしたりもしますね、意識的に。芸人の喋りの雛形みたいなんあるでしょ? そういう風にあえてやってるっていうのはありますね。
シモダ: わかります。つまり番組っていうことやから、段取りを意識して、相手がこう言ったらこう返して、みたいなのを常に意識しますよね。リアルタイムに考えて話していくっていう。
タナカ: それが結果的に、考えたことをまとめながら話をするっていうことの練習になったと思いますね。今ではもうおしゃべりが止まれへんからね。
表現者は蛇口をひねれ

シモダ: 関西人てもともとおしゃべり好きなんでしょうね。でもその中でも、カツキさんてむっちゃ喋りますよね。
タナカ: 僕よく喋りますね。
シモダ: すごいパワーですよね。昔からなんですか?
タナカ: あんまり覚えてないんですけど、たくさん喋るようになったのは途中からなんですよ。訓練をし始めてからですね。
シモダ: へぇ、そうなんですね。僕はカツキさんとはじめて会ったときに『マンガ家なのにこんなにおしゃべりで社交的なんや!』ってすごいカルチャーショックやったんですよ。
タナカ: そうですか?マンガ家ってめちゃめちゃ喋りますよ。
シモダ: 世間的にはどっちかっていうと寡黙なイメージじゃないですかねぇ。だって『まんが道』だって、ほとんど描いてるシーンばかりじゃないですか。
タナカ: いや、ほとんど描いてるからこそ、めちゃめちゃおしゃべりなんですよ。『まんが道』でも『トキワ荘』でも、描いてはいるけど、基本的にマンガ家仲間が集まって喋ってるわけですよ。それぞれに溢れ出る何かがあって、ずっとおしゃべりが止まらないんですよ。喋ってないと辛抱たまらんみたいな。それが描くことに繋がるわけですよ。マンガ家はそういう人間やと思いますね。
シモダ: アイデアが出続けてるってことですね。
タナカ: アイデアが湧くから、表に出さんと健康にも体にも悪い。だからテレビに出ているマンガ家のコメンテーターやクイズ回答者はいっぱい喋るでしょう?
シモダ: 喋りとうてしゃあないんですね。
タナカ: そうです。ものを表現する人は喋らないと思われがちですけど、実際は違いますよ。あのね、ものを作る人ってすごくデリケートな人が多いんですよ。シャイとかね。そういったことに囚われて、あんまり喋らん人がいるのも事実です。でも頭の中のおしゃべりが止まらずに、『あの人はどう思てるやろう、こんなん言うたら恥ずかしいなぁ』ってずーっと思ってるからシャイになるわけでしょう。つまり頭の中ではアホほど泉が湧いとるんですよ。
シモダ: そこで蛇口さえひねったら、あとは止まらんようになるわけですね。みんなも蛇口をひねれと。
タナカ: そうです。僕は基本的に蛇口が壊れてるんですよ!
シモダ: 『僕は蛇口が壊れてる』。それ、この対談のタイトルに差し替えましょうか。
タナカ: 蛇口が壊れてるから喋ってまうんですよ!
シモダ: 喋って『まう』て(笑)。もう自分の意志では止まらないんですね。
タナカ: はい。蛇口が壊れたオッサンでございます!
アイデアの泉は噴水状態

シモダ: カツキさん、そんなに精力的に仕事してたら、あと2〜3年で倒れてまうんやないですか。切れますよいつか。
タナカ: いやいや、僕、人間ドッグで10人に一人の健康体や言われましたから。大丈夫です。
シモダ: めちゃめちゃ元気ボーイじゃないですか。アイデアなんて湧いてしょうがないんでしょうね。
タナカ: 湧きまくって追っつかないですよ。忘れていくものもありますし。デジオが唯一のメモですね。800本くらいありますよ。
シモダ: メモ代わりなんですね。僕はなんでラジオやってるかって言ったら、年をとってヨボヨボになったときに聞き直したいんですよ。『俺に歯があった頃はなぁ』みたいな感じで懐かしみたい。
タナカ: いやぁ、聞き直すことはないと思いますね。きっと僕らの老後ってめちゃめちゃ忙しいと思いますよ。だからラジオなんて聞き直せないです。もうキャッキャ!キャッキャ!いうて、今の老人の感じじゃないですよ。だってもう、半分機械やからね。
シモダ: サイボーグみたいなもんなんですかね。
タナカ: もう完全に脳内にインターネットつながってますからね。もちろん体は衰えるんで、ソファーにダラーっと寝転んだままで、頭ん中がキャッキャしてる状態ですね。網膜におもしろビデオが張り付いてるんです。
シモダ: (笑)話ガンガン膨らみますね。
タナカ: ええ。さっきも言ったように止まらんのですよ。アイディアの泉は噴水状態で出とるわと言いたいですね。汲み取る暇なんてないんです。
心のバランスをとるために

シモダ: カツキさんは基本的にポジティブですよね。
タナカ: 落ち込むこともありますよ。でも落ち込んでる状態があんまり気持ちよくないんですよ。気持ち良かったらしょっちゅうやろうと思いますけど。だからむっちゃコントロールしますよ。
シモダ: 自分で気持ちを上げていくんですね。
タナカ: そうです。でも、落ち込まんと楽しい気持ちにもならないでしょ?楽しいことと落ち込むことは、相対的なことやから。だから、逆にすごい楽しいことがあっても:この楽しさもあとどんだけやねん」とか思って気持ちを鎮めるんです。そういう風にコントロールしてますよ。
シモダ: 楽しい時に鎮めるっていうはなかなかしませんよね。
タナカ: 楽しいままやと、いきなりガクーンて落ち込んだときにしんどいからね。そこがコントロールです。ただ、落ち込むのも、ある意味面白くなるための戦略じゃないですか。逆に落ち込みもしないってなると、楽しみもなくなるわけでしょう。
シモダ: 相対的に考えたらそうですね。僕はあんまり落ち込まないんですよね。ウンコ踏んでも『ラッキー!ひとネタゲット』みたいな感じに考えてますね。
タナカ: それは、微妙にわからんように落ち込んでるんじゃないですか。
シモダ: なるほど。僕なりにコントロールできてるんですね。
タナカ: テンションを調整するのってやっぱり気を遣いますよね。それは意識してやってるかもしれません。例えば、朝起きるでしょ?朝起きたときって、最初っからテンション高くないじゃないですか。部屋でぼーっとしてたら、いつまで経ってもテンション上がらない。そこで工夫が必要になるわけですよ。天気が良かったらちょっとベランダに出るとか。コーヒーゆっくりいれてみるとか。
シモダ: 日の光浴びると全然ちがいますよね。
タナカ: そう。窓から入る光を見て、今日はきっときれいな夕日やなあと思ったら、わざわざ外に見に行って、ちゃんとこう手を合わせてね。『ありがとう、おひさまありがとう』。
シモダ: (笑)ちょっと仙人的ですね。
タナカ: フワーっと日の光を浴びて、気持ちいいなと感じたら、なんとなく人にやさしくできるでしょう。ぼーっとしてたら、エネルギーも湧いてこえへんしね。いつまでたっても気分が上がらない。
シモダ: 結構バランスをとるように、いろんなことをしてるんですね。
タナカ: 面倒くさいけどやりますね。本当はね、サウナも行きたくないのよ。なんにもしたくないわけ。でもなんにもせえへんていうのは逆にしんどいから、そこでアクションを起こしますよね。
シモダ: いろんな人と会ったりっていうのも一つのアクションですよね。それは面倒くさくはないんですか?
タナカ: それは僕、前回も言いましたように断らないっていう信念がありますから。
シモダ: でも、断らずにいろんな人と会ってたら、面白いなりにも疲れません?
タナカ: でも疲れ方がちがうでしょ?遊びで疲れてるのと、精神的に嫌な思いして疲れるのと違うじゃないですか。
シモダ: 全然ちがいますね。
タナカ: 体力なんて寝りゃあ戻るからね。でもね、心は戻らないじゃないですか!
シモダ: どうしたんですかいきなり(笑)今17歳のカッちゃんが見えましたよ。
タナカ: 心は体と違うから、寝て回復するものじゃないんです。いちばんの回復方法は、友達と遊ぶことなんですよ。友達と遊んでたら楽しいじゃないですか。疲れても、それは一人だけの疲れじゃなくて会ってる人みんな共有した疲れやから、みんなで『疲れたなあ』って言い合えますよね。これもまた楽しい。
シモダ: キャンプのあとみたいな、爽やかな疲れですね。
タナカ: だから遊びの誘いというのは、絶対行かなダメですよ。
シモダ: すごいですよね。たぶん70歳とかになってもそうなんでしょうね。
タナカ: ヨボヨボで寝たきりやけども。
シモダ: そんなときに僕が『カツキさん、僕68歳の誕生日なんで来てください』
タナカ: じゃあ行くわー、ってもうフラフラしながら。
シモダ: そんときだけ目覚めるんですよね。長い眠りから。
マルチに活躍する時代

シモダ: カツキさんの作品には、マンガと映像と、止まってるものと動いてるものの二つがあるじゃないですか。そこの区分けっていうのは何かあるんですか?
タナカ: 皆さんその二つを分けたがるんですけれども、絵を描く人ってね、キャラクターひとつ描くときに、どうこいつを生き生きと見せるかな言うて描いてるわけでしょう。魂を、まるで生きてるように描きたいわけですよね。シモダくんもそうでしょう。
シモダ: わかります、こいつ何考えよんねやろうって考えながら描きますね。
タナカ: そういう意味では、絵を一枚描くんと、アニメーションにするんと、同じなんですよ。生き生きとさせたいっていう目的やから、全く同じことなんです。
シモダ: なるほど。さっきもちょっと聞きましたけど、マンガだけじゃなくてマルチで活躍されてるじゃないですか。だからこその楽しさって何かありますか?
タナカ: マルチっていっても、僕だけじゃないと思いますよ。シモダくんこそ、会社員っていう土台はあるけど、編集もやる、ライターもやる、いろんなことやってるじゃないですか。一個のことだけやってる人って少ないですって。それに、こんなにころころ変わる時代に一個のことだけやってるほうがおかしいですよ。
シモダ: 確かに、僕も普段は会社員してますけど、自分の時間を使って『オモコロ』をしてきましたし、その他の外部の仕事も引き受けてますね。マンガも描くし、こうやって対談もさせていただいてる。そこで肩書きを意識したことってないですね。
タナカ: そうですよ。何やってる人かわからなくて当然なんです。
シモダ: でもカツキさん的には『マンガ家や!』って信念持って言われてますよね。
タナカ: 言うてますね。なんかね、信念を持って言えば言うほど、マンガの依頼がないのおもしろいかなと思って(笑)。おもしろく引き立つじゃないですか。
シモダ: コマ割りさしてもらえへんみたいな(笑)
タナカ: 全然さしてもらえませんよ。まぁでもですね、こんなの全然珍しいことじゃないんです。用意された肩書きとやってることが違うっていうのは普通のことですよ。
シモダ: なるほど。人は流動的に生きてるんやからと。
タナカ: そうです。ただ、人っていうのはどうも人間を分類したがる癖がある。そういう人のために僕は『マンガ家や』と言うてるわけです。僕はマンガ家の皆さんがすごい憧れやし、すごい方たちやと思うんで、その一員でいたいという願いをこめて言うてるわけなんです。本当は誰しも、マルチに色々とやって当たり前なんですよ。
きょうのおさらい
タナカカツキ氏とのお喋り会後編、いかがでしたでしょうか。アイデアが湧いてしょうがないというタナカカツキ氏のアイデアの泉に、少し近づけたのではと思います。それでは今回のおさらいです。
1.アイデアを口にしてみる
頭の中に浮かんだアイデアはまず口に出してみます。
ラジオ形式でのおしゃべりは、考えをまとめて話すための最高の練習になります。
2.心のバランスをとる
浮き沈みが激しいと、いい結果が出せません。
楽しいときも少しクールダウンをする余裕を持ちましょう。
心の疲れは、気のおける仲間とのおしゃべりで元に戻ります。
3.肩書きに捕われず、マルチに動く
与えられた肩書きから少し離れて、今の仕事を見直してみるのもいいかもしれません。
行動次第で自分の役割は広がっていきます。
2回に渡って対談を行いましたが、個人的に、「心の疲れはお喋りで解消」という部分はとても共感できました。 脳みそが「楽しい状態」になるのは健康的ですね。
筆者プロフィール
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シモダテツヤ
「オモコロ」という残念なお笑いポータルで編集長をしております。鹿と大仏の街 京都で生まれ育ちました。 ヤドクカエルの体内に含まれる毒をインディアンに売る仕事を担当しており、仲間からの信頼度は常に0をキープしてます。右手がドリル、左手もドリルに改造されているのでタイピングが凄く不便です。 好きなイカは大王イカです。







