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電子楽器「ウダー」開発者、宇田道信氏インタビュー
カメラのレンズにしか見えないこの黒い筒、実はれっきとした楽器なんです。それも、20代エンジニアが自ら開発したというから驚き! その楽器に込められた宇田道信氏の情熱と開発経緯に迫ります。

カメラの望遠レンズのようにもルービックキューブ(←古い)のようにも見える黒い筒が楽器だとは!!
YouTubeの動画で演奏風景が公開されて以来、この不思議な楽器(のようなもの)に大きな関心が寄せられた。
この楽器(のようなもの←しつこい)は何なのか?
そこで、この楽器の演奏者であり開発者でもある宇田道信氏に話を聞いてみよう。
大学時代に始めたクラシックギターがウダー開発のきっかけ
宇田道信氏
「この楽器は、自分の苗字を取って『ウダー』と名づけました」
そう語る宇田道信さんは現在27歳。普段は半導体メーカーでエンジニアとして働いている。宇田さんの開発したウダーが完成したのは大学時代にまで遡るらしい。
「大学でクラシックギターのサークルに入って弾いていたんですが、ギターの構造というか仕組みが、自分の理想とする楽器と違うと感じ始めたんですね。せっ かく楽器をやるなら一生、弾けるものが良いと思っていたので、どうせなら自分の頭のなかにある理想形を具現化しようと思ったんです」
最初は大学でも理工系の学部だったため、周囲の機械に詳しい友人に自分の「楽器の理想形」を説明し、誰か他の人に製造してもらおうとしたそうだ。が、どうもうまくいかない。そのうち宇田氏は、
「それなら自分で創ってしまおう」
との結論に至る。
ウダーの設計・開発に必要な知識は、宇田氏の大学の専攻科目と完全には一致しなかったものの、その道に詳しい教授陣に積極的にアドバイスを求めることで解決していった。
「ウダーを製造するとき、『CNC加工機』が必要だということがわかり、通常は何百万円もする加工機をネットオークションで40万円で落札した、なんてこともありましたね」
いくらオークションで格安で買えたといっても、楽器製造のためだけに40万円の出費。宇田氏がウダー製造にかける思いが並大抵のものではないことを物語っている。ついでに言うと、ウダーの開発に熱中するあまり、大学卒業に8年、それからさらに無職だった期間が1年半もあったとか。
感圧導電ゴムが実現した夢の楽器「ウダー」
ここでウダーの構造・仕組みについてざっと解説する。
ウダーは、筒のような本体にグルグルと巻きついているゴムチューブを指で押すことで音の信号を送る電子楽器だ。そのため本体はアンプ(なんと小型冷蔵庫を改造して造った!)に接続して音を出す。
チューブを押さえる箇所をずらすと徐々に音程が上がり、一周するとちょうど1オクターブ音が上昇する仕組みだ。一度にチューブを何箇所も押さえて複数の音を出すこともできるので、演奏に習熟すればメロディーに伴奏をつけたり和音を奏でることもできる。
宇田氏が指で押さえている黒いチューブこそが、感圧導電ゴムなのだ
音色はアンプの音源に依存するが、現在はMIDIを採用。ピアノやストリングス、打楽器など様々な音色を奏でることが可能となる。さらに、音色を変えたり音程の上げ下げを実現する「隠しコマンド」も搭載しており、演奏者の力量次第でかなり高度なテクニックを要する曲の演奏も不可能ではない。
エンジニア的視点で注目したいのは、この「ゴムチューブ」の存在。
実際に演奏してみるとわかるが、チューブを押す圧力の強さによって音の大きさが変わるのだ。さらに、チューブを押しながら指をずらすと、無段階に音程が上昇する。ピアノの鍵盤であればドとド#の間にある音程は演奏できないが、ウダーはそれを可能とするわけだ。でもこの機能、どうやって実現しているのか?
「このチューブは『感圧導電ゴム』という素材です。従来、絶縁体とされているゴムに導電材を混ぜることで、『電気を通すゴム』にした画期的な素材です。この素材がなかったらウダーは完成していなかったでしょうね」
この感圧導電ゴム、一般的には工業製品のスイッチやセンサー部分に採用されている。その素材の特性を見抜き、楽器に応用した宇田氏の発想はまさにエンジニアならでは。
宇田氏にとってのキャリア、そしてウダー開発者の使命感
ウダーは過去に販売していた時期もあったが、現在は中止している。量産の話が持ち上がることもないではないが、安心して一定のクオリティを持った量産体制の確立となると目処が立たない。ウダーは誰が見ても画期的な発明品と呼べる代物なだけに、宇田氏がウダーの普及にいまひとつ踏み切れていない状況は傍から見てもどかしい気もするが……。
「今は企業に所属する半導体エンジニアとしての本業がありますが、ゆくゆくはウダーの普及に没頭するのかもしれません。まだ具体的な時期は見えないですね」
宇田氏の勤務先は、国内一流メーカーと並ぶ高待遇で知られる。だが、その待遇の良さを捨てる未練はまったくないそうだ。
「エンジニアにとって興味があるのは自分で良しと思える業務内容だけなんですよね。少なくとも僕自身について言えば、他人のことや業界の動向、こうすれば稼げるといった話題には関心がない。ただ、ウダーを世の中にもっとも良いと思える形で普及させるために必要なら起業も考えますが、それはウダーのためであり、自分が営利を得たいからというわけではないんです」
一見、飄々としたキャラクターの宇田氏だが、そのまなざしには強い意思が感じられた。
まさにエンジニア魂をそのまま人生で体現している、ともいえるだろう。
宇田氏の演奏を生で聴いてみたい人は、電子楽器「ウダー」公式ページに掲載されるイベント出演情報をチェックすべし!




